2.2.12

建設会社へ「取壊し見合せのお願い」を送付

 201222日、当会は、大手建設会社と日本建設業連合会に「旧大阪中央郵便局舎の取壊し見合せのお願い」を送付しました。あわせて、当会の声明文、201221日現在の賛同人リスト(106名)とメッセージ、賛同署名者数(1031名)もお送りしました。


【取壊し見合せのお願い】
201222
「大阪中央郵便局を守る会」代表 長山雅一

 拝啓 向春の候、貴社いよいよご清栄のこととお慶び申し上げます。私ども「大阪中央郵便局を守る会」は、大阪駅前にある旧大阪中央郵便局を大切に思う、市民と専門家の団体です。大変ご無礼かと存じますが、お願いがあり、ご連絡をさせていただきます。

ご案内のとおり、大阪中央郵便局庁舎は、1939年(昭和14年)に建てられ、戦前期における日本の建築文化の到達点として、日本近代建築史上、最も重要な建築に位置づけられています。世界的にも近代主義建築の理念を具現化した、最初の本格的な公共建築として、海外の建築界から高く評価されてきました。日本建築学会は、「国指定の重要文化財の水準をはるかに超える価値がある」と公式見解を示しています。庁舎は、大阪の優れた都市文化を今に伝える国民共有の財産です。昭和の初期、大阪には数多くのモダンなビルディングが建設され、大阪人は都会のライフスタイルと最新の文化を謳歌しました。しかし既に阪急ビルディングもなく、大阪駅前に描かれた近代的な都市計画と景観を今に伝える建築は、大阪中央郵便局庁舎ただひとつとなってしまいました。しかし昨年末、日本郵政グループは旧庁舎を解体して跡地を暫定的に整備し、広場とするとプレスリリースしました。現在発表されている事業計画では、保存とは名ばかりの、この建物が有している価値を全く無視したものとなっています。もし、計画通り、この建築が解体されることになれば、大阪という都市の歴史が失われることに繋がります。

丁度、一年ほど前、東北地方では、有史以来最大級の大地震が発生し、建設会社の皆様は地震発生直後から、その復旧・復興のため、昼夜を問わず献身的な努力をされてきました。東北地方では、復興事業のために働く建設現場の職人さんが逼迫しており、人件費が高騰して、必要な工事を実施することが困難な状況です。国民全体が一致協力して、復興を最優先に取り組んでいる今、今後の再開発計画の目途も立たないにもかかわらず、とりあえず庁舎の解体を急ぐことは、被災者への思いを欠き、国民感情を逆なでするものです。このような国の非常事態において、不要不急の解体工事を実施することは、身勝手な行為と言われてもいたしかたないでしょう。

大阪中央郵便局庁舎は、重要文化財の価値があると評される建物ですが、それは建設に携わられた現場の職人さんたちの一人一人の汗の結晶として実現したものに他なりません。戦前の物資が乏しいなか、大変な努力をして先輩たちが建設されたこの素晴らしいし建物を、自らの手で解体させられるのは、どれほど、辛いものでしょう。どの建物も人の命と同じように、一度壊せば二度と取り戻すことの出来ないものです。先人が築いた大切な歴史の遺産を、大阪の顔として活用し、未来に残すことこそが必要なのではないでしょうか。
私たちは、大阪駅前の真の地域活性化と文化創造のために、旧大阪中央郵便局舎の解体を一旦、白紙に戻していただくことを望んでいます。旧庁舎は、海外の郵便局にいくつも事例があるように、保存しながら新しい用途として活用し、隣地に高層ビルを建設して街区全体として再開発を行うことが、土地・建物の所有者にとっても、事業採算性がよく、一番良い選択であると信じます。駅前の人の流れの改善や、地下設備のルートの変更など、このかけがえのない建物を、未来に継承したいと思う気持ちがあれば、簡単に解決できます。

建設会社は、日本の国土を形成し、日本の文化を築くという重要な社会的使命を果たしてきました。発注された工事は、何でも、唯々諾々と受注するような存在ではありません。皆様の企業人としての誇りを是非、お示しいただきますよう、大変僭越ではございますが、心よりお願い申し上げます。
敬具

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